(126)「オバマ大統領の歴史的なプラハ演説によせて」 2009/04/07
みなさん こんにちは 吉良州司です。
4月5日、北朝鮮の「飛翔体」が日本の東北地方上空を飛翔しましたが、 (現時点では)日本はじめ各国に実害が出ていないことは幸いです。
核実験、ミサイル発射実験、そして、今回の衛星(?)打ち上げ実験と、 よくもまあ、これだけの暴挙が連続して実行できるなあと本当に呆れて しまいます。今後このような暴挙を決して許してはならないと思います。 しかし、「言うは易く行うは難し」、その具体的方策をどうするのか、 今、日本の安全保障に突きつけられている最大の課題だと思っています。
さて、本メルマガでお伝えしたいことは、この問題と関連して、 4月5日にオバマ大統領がチェコのプラハでおこなった演説についてです。 この中で、同大統領が、広島、長崎に原爆を落としたことについての 道義的責任に言及したこと、核兵器廃絶、核軍縮に取り組む明確な 方針を打出したこと、その演説を聴いて私が思ったことなどを みなさんにお伝えしたいと思います。
少し長くなって恐縮ですが、まず、オバマ大統領演説の要旨を 下記します(朝日新聞の訳文をベースとして当方にて要約)。
(1) 米国は、核兵器保有国として、そして核兵器を使ったことが ある唯一の国として行動する道義的責任がある。
(2) 米国は核兵器のない世界の平和と安全保障を追求することを 表明する。
(3) 冷戦思考に終止符を打つため、米国の安全保障戦略の中での 核兵器の役割を削減し、他の国にも同調を呼びかける。
(4) ただし核兵器が存在する限り、抑止のための、安全で、厳重に 管理された核戦力を維持する。そしてチェコを含む同盟国に対し、 その核戦力による防衛を保証する。一方で、米国の核戦力を 削減する努力を始める。
(5) 核弾頭と貯蔵核兵器削減のため、今年ロシアと新たな 戦略兵器削減条約を交渉する。メドベージェフ・ロシア大統領と 私はロンドンでこのプロセスを始め、今年末までに新合意を 目指す。そして他のすべての核保有国に同合意への参加を促す。
(6) オバマ政権は包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty=CTBTあらゆる形での核実験を禁止する 条約)の批准を目指す。核実験はいよいよ禁止される時だ。
(7) 核不拡散条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty=NPT= 核軍縮を目的に、米国、ロシア、英、仏、中国の5カ国以外の 核兵器の保有を禁止する条約)など既存の核に関する規制を 強化する。
(8) 民生用原子力協力のため、国際的な核燃料バンクを含む、 新たな枠組みを作り、核拡散の危険を増すことなしに原子力 利用ができるようすべきだ。
(9) 今朝(4月5日)我々は、核の脅威への断固たる対応が必要だと 再確認した。北朝鮮が長距離ミサイルに利用できるロケットの 実験を行い、再び規則を破ったからだ。この挑発に対して厳しい 国際対応をとる時だ。北朝鮮は脅しや違法な兵器によって安全と 敬意を勝取れないことを理解すべきだ。
(10)イランに対し、私の政権は相互の利益と尊敬に基づく関係を 追求する。我々はイランが世界において政治的・経済的に 正当な地位を占めることを望む。我々はイランが査察を条件に 原子力エネルギーの平和的利用の権利を認める。
(11)イランの核や弾道ミサイルをめぐる活動は、米国だけでなく、 イランの近隣諸国や我々の同盟国の現実の脅威だ。チェコと ポーランドは、これらのミサイルに対する防衛施設を自国に 置くことに同意した。イランの脅威が続く限り、ミサイル防衛 (MD)システム配備を進める。脅威が除かれれば、欧州に MDを構築する緊急性は失われるだろう。
(12)テロリストが核兵器を取得することは世界の安全への最も 差し迫った、大変な脅威だ。アルカイダは核爆弾を求めている と表明している。安全に保管されていない核物質が世界各地に あるが、人々を守るために我々は目的意識を持って直ちに 行動しなければならない。
(13)今日私は、テロリストに狙われるあらゆる核物質を4年以内に 安全な管理体制下に置くため、新たな国際的努力を始めることを 発表する。これらの物質を厳重な管理下に置くため、 新しい基準を制定し、ロシアとの協力関係を拡大し、 また他の国との新たな協力関係も追求する。
(14)核物質の闇市場をつぶし、移送中の物質を探知・阻止し、 財政手段を使ってこの危険な取引を阻止する取組みも強化 すべきだ。大量破壊兵器の拡散防止構想や核テロリズムに 対抗するグローバル・イニシアチブ(GI)などを恒久的な 国際機関に変えるべきだ。まずそのはじめとして、米国は 1年以内に核管理に関する首脳会議を主催する。
(15)こんなに広範囲な課題を実現できるのか疑問に思う人もいる だろう。各国の思惑に違いがある中で、真に国際的な協力が 可能か疑う人もいるだろう。核兵器のない世界、そんな 実現できそうもない目標を掲げることを疑う人もいるだろう。
(16)このことに関して国や人びとがそれぞれの違いを認めて しまうと、お互いの溝は広がっていく。我々が平和を追求 しなければ、平和には永遠に手が届かない。協調を否定し、 あきらめることは簡単だが、臆病なことだ。そうやって戦争が 始まる。そうやって人類の進歩が終わる。
(17)我々の世界には、立ち向かうべき暴力と不正義がある。 それに対し、我々はともに手を携えて立ち向かわなければ ならない。
(18)人類の運命は我々自身が作る。ここプラハで、よりよい未来を 求めることで我々の過去を称賛しよう。分断に橋をかけ、 希望を持って建設し、平和な世界、繁栄する世界への責任を 担おう。共にならば、我々にはできるはずだ。
このオバマ大統領の演説は、恐らく、歴史を大きく塗り替えていく、 そして子々孫々に語り継がれていく、画期的な歴史に残る名演説だと 思います。私自身、衝撃的な感動を覚えました。
いわゆる「保守」と言われる人々、政治家は「非現実的な理想論」を 嫌う傾向があります。これまで、核軍縮や核のない世界平和などと 主張しようものなら、「平和ボケした左派の戯言」という感覚を 持っていただろうと思います。日本の本音ベースの安全保障論、 安全保障政策もこの「保守的感覚」を前提にして構築されていた ものだろうと思います。このことは米国でも、また欧州各国でも 同様であろうと思います。
しかし、世界で一番強い国、軍事力で世界の誰もが太刀打ち できない国、そしてその国民に圧倒的な支持を得ているリーダーが、 断固たる決意を持って臨めば、この理想が現実になるということを、 世界に示してくれた、筆舌に尽せないほど素晴らしい歴史的名演説 であったと思います。
米国は、桎梏から逃れて自由を求め、平和で豊かに暮らすことを 夢みる人々が創り上げようとしている「理想を求め続ける国」です。 サブプライム・ローンに端を発する世界的金融・経済危機が あったればこそ、言い換えれば、この大きな挫折があったればこそ、 今一度原点に立ち返りたいとの思いで、自分達の理想、人類の理想を 先頭に立って求め続けるリーダーを選んだのだと思います。 これこそが米国の底力です。
一方、日本にとって一番大きな(いい意味での)衝撃は「米国は、 核兵器を使用した唯一の核保有国として、行動する道義的責任 がある」と、小生が知る限り、はじめて、広島、長崎への原爆投下の 道義的責任について、米国が、それも最高指導者の大統領が言及して いることです。この発言があるからこそ、世界に向かって核の廃絶を 呼びかける説得力が出てくるのだと思います。本来ならば、 これまでの日米同盟の交渉・関係の中で出てきてもよかったと 思っていますが、米国自ら、この同義的責任に言及したことは、 日本に対して、世界に対して極めて大きな意義を持つと思います。
本当にすごい「世界の指導者」が現れたものです。命をも懸けた この名演説、そこで掲げた理想を、世界の人々と心を一にして 実現していきたい、そう強く思いました。
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