活動報告
(5月19日配信メルマガ)「消費税論議なくして、財源面からみた医療制度の根本解決はない」 2008年5月23日
みなさん こんにちは!
吉良州司です。
今日のメルマガは今国民、特に高齢者にとって一番の関心事である「後期高齢者医療制度」の問題で明らかになった現行の医療制度の財源面における問題点と、その解決の方向性について、私の考えるところをお伝えしたいと思います。
先週、私が大分県知事選の時から大変お世話になっていた大恩人が逝去されました。82歳でした。戦前、満州に渡り、終戦後は長きに亘るシベリヤ抑留に耐え抜き、復員後も大変な苦労をされて大分県一の会計事務所を創業、経営されてきた方でした。正義感が服を着て歩いているような、また、気骨のかたまりのような方でした。心からご冥福を祈ります。
葬儀の席で、その同級生の方(82歳)と一緒になりました。この方も、父の代から親子2代に亘りお世話になっている方です。その方がこの後期高齢者医療制度のことについてしみじみと語られていたことが脳裏に焼きついて離れません。
曰く『我々の世代は、戦争中、国の為に死んでくれ!といわれた。戦中は命をかけて、そして戦後も、一所懸命お国のために尽くしてきた。自分達の頑張りもあって今の日本があると思うが、この歳になって、再び、お国のために「早く死んでくれ!」と言われようとは思わなかった』と。
今の75歳以上の高齢者は、高度成長にも乗り、無事に職場を勤め上げて、ちゃんと退職金ももらえた世代だと羨みの対象ともなりますが、戦前、戦中、戦後と大変な苦労をされた方々です。また、この方々は「高度成長に乗った」のではなく、この方々の血のにじむような努力、頑張りによって「高度成長を自ら実現した」方々でもあります。その結果として、今の豊かな日本を築き上げてくれた大恩人の方々です。また、この方々は、「心」を大事にする世代でもあり、自分達は辛抱しても、子や孫に豊かな生活させたいと思う世代です。自分達も相応の負担をすること自体は、理解できない方々でもありません。
しかし、75歳以上の高齢者を狙い撃ちにするなど、そのやり方がこの世代の方々の心を踏みにじってしまったことが、 今回の高齢者医療制度の最大の問題だと思います。
「狙い撃ち」と言いますのは、ご存知の通り、(1)75歳以上の高齢者だけを切離した医療保険制度としたこと、(2)限られた年金だけで生活している高齢者も多い中で、そのなけなしの年金からその保険料を、まるで「みせしめ」のように天引きすること、(3)これまでは子供の扶養家族として保険料負担がなかった高齢者まで、探し出されて、新たに保険料を徴収すること を意味しています。
苦労を重ねてきたこの世代の方々を狙い撃ちする、この仕打ちはとても納得できません。既に始まりましたが、これからでも廃案にすべきだと思います。ただ、反対、廃案だけでは、解決にはなりませんので、解決策の方向性について、考えてみたいと思います。
政府は何故75歳以上の高齢者だけを切離そうとしたのでしょうか?
- 国家の長期債務840兆円が将来不安と経済政策、金利政策の制限をもたらす。
- よって、一刻も早くプライマリーバランス(基礎的収支)を黒字化するする必要がある。
- その為には医療費を含む社会保障費も例外とせず、切り詰める必要がある。
- 医療費の中では、高齢者の医療費が大きく、これを押さえる必要がある。
- そのひとつの手段として、医療費増大が自分達の年金から天引きされる保険料上昇に直結する仕組みとすることにより、医者への通院頻度を下げてもらう。
このような考え方が根本にあったのではないかと思われます。
医療制度全般については私も現在勉強中ですが、大きく二つの問題を語らせて戴きたいと思います。
ひとつは、皆保険制度自体は是としても、現行の保険制度には限界がある、少なくとも今後の少子高齢化の更なる進展によって限界どころか破綻する可能性が高いということ。もうひとつは、その解決策としても消費税率アップを抜きに議論できないということです。
今回の高齢者医療保険制度の財源は75歳以上の高齢者保険部分が10%、現役世代の健保などから40%、税投入が50%ですから、基礎年金と同様、相当額の税金が投入されます。この意味するところは、人口構成がピラミッド型の時代に設計された医療保険制度が、少子高齢化の進展により、もはや立ち行かなくなっており、税投入が不可避であるということです。
ならば、まさに抜本改革すべきです。今回の高齢者医療制度も、75歳以上の高齢者を狙い撃ちにするのではなく、また、それを、子育て世代などお金がかかる現役世代に大きな負担を背負わせるのでもなく、必要な医療費は高齢者も含めて社会の構成員全員で負担する、即ち、消費税率アップによる財源確保とすべきです。
そもそも現在の保険制度は消費税導入前に設計された制度です。共助と自己責任の精神に基づいて設計されています。当たり前のことですが、保険に加入し、保険料を払うことによって受益も得られるという仕組みです。
しかし、年金保険料を払っていなかった人が年老いて、年金収入はないし他の収入もなくて生活できないという人を、国がほったらかしにしておくことはできません。税金を原資とする生活保護で生活を支えるほかないのです。40年間コツコツと年金保険料を払い続けてきた人の年金収入より、過去一銭の年金保険料も払わなかった人の方が、年金より多くの生活保護収入があるといった社会の矛盾を象徴するようなことが現実にあります。
医療も、医療保険に加入していない人が病気になったといってお医者さんが診療を拒否することはできないのです。
その点、消費税は、あらゆる人が負担しますので、その消費税分が医療費の財源になるということなら、ある意味では強制的に国民全員から保険料を徴収しているのと同じことになります。
その意味でも、「保険方式か税方式か」「その組み合わせか」という根本議論を、消費税アップの議論も避けずにやっていくことが今の政府、そして全ての政治家の責任だと思っています。
小泉政権が「在任中に消費税は上げない」と宣言し、その政権が5年半も続いたことから、消費税論議を避けたまま、限界が近づきつつある既存制度の対症療法が繰り返されてきたのです。その代表選手が、先の「100年安心の年金制度(?)」であり、今回の高齢者医療制度なのだと思います。対症療法ではもはや立ち行かないのは国民の目から見れば明らかなのですが、過去の成功体験が忘れられず、既存制度に固執する自民党政権では、根本改革はできないのです。
勿論、消費税率をアップする前に、現在、目を覆いたくなるような官僚天国税金無駄遣いし放題政府のあり方を根本的に見直し、税金無駄遣い一掃を進めなければならないことはいうまでもありません。しかし、それが完璧にできていないからといって、これ以上問題を先送りすることは許されません。
無駄な医療行為を減らして医療費の増大を抑えることは当然やっていかなければなりません。これには医者側、患者側双方の意識改革が必要だと思います。一方で、それでも必要な医療については、それが75歳以上の高齢者にかかわる費用であったとしても、社会の構成員全員でその増加分を負担すること、即ち、消費税をその財源に充てるべきだと思います。
−吉良州司−