活動報告

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(5月18日配信メルマガ)「日本の外交戦略」 2008年5月23日



みなさん こんにちは 
吉良州司です。


今日は、前回のメルマガに続き、5月14日の元外務省幹部による講演「日本の外交戦略」についての趣旨をお伝えしたいと思います。今回も実名は伏せさせて戴きます。


QTE
日時:2008年5月14日午後
講師:外務省元幹部
テーマ:日本の外交戦略


1.外交戦略とは
・日本に外交戦略がないというのは、不思議なことに政府政策への反対者に限って、よく言うことだ。

・反対者は、具体的な外交戦略を示したためしがない。

・「外交戦略」というものを考えるとき、「外交」「戦略」と別個になっていて、「外交戦略」とはという定義がしてあるものはなかなかない。独自に定義すれば、「国家戦略の一環。政府間で行われる交渉或いは政策。」だと考える。

・日本に外交戦略がないと批判される理由を考えると、戦後日本は、敗戦国となり、占領国アメリカの言うことを聞いてそれに対する反応、リアクションをしてきたため。対米依存、都度対応型の外交をしてきたため。



2.リアクション外交、反応型モデル
・日本外交の1970年代2つの悪夢 →米中接近、ドル金兌換停止

・日本は、ニクソンショック直後には、米国から自立を求められ、湾岸戦争の際には、アメリカからもっと支援をと求められた。その結果、先般のイラク戦争では、共通一次の湾岸戦争をギリギリで通って、点数の上積みが必須だったため日本は、突っ込んでいってしまった感はある。
これから、日本は、きちんと国際貢献などできる協力を確実にこなしていかなければ、対米関係においても、国際的にも信任を得られない。

・日本はアメリカを、1国だけの世界的な覇権国として好き勝手やっているというように見る向きがあるが、アメリカはアメリカで、日本をユニラテラリズムの国でアメリカのやることに好き勝手なことを言ってくるという風に見ている

・日本外交にとって重要なことは、やはりアジアの平和安定をいかにして作っていくかだと思う。そのためには、日本、米国、中国、ロシア、韓国のアジア関連5大国が責任を持って対処していく必要がある。

・先般の日中首脳会談、日中共同宣言では、日中両国がアジアに責任と自覚を持つ旨が示されており、大変良い方向性だとおもう。



3.2極→1極→多極
・日中の関係
中国は、BRICSの1国として、今後大変に力を増してくることは間違いない。良好な関係を保っていかなければならないが、一方で、日本が常任理事国入りをしようとした際には、あからさまに反対工作をしてきた。
両国は、今後覇権を回避し、戦略的互恵関係の実体化をしていく必要がある。

・日米関係
アメリカとは、日米安保条約の締結以来、アメリカの戦争に引き込まれる恐怖と、アメリカから見捨てられる恐怖を味わってきた。これからは、残念ながら、見捨てられる恐怖になるだろう。日本は国際貢献など、アメリカの活動に資することを着実に行っていかなければならない。そういう意味で日本のインド洋自衛隊派遣は重要だったし、集団的自衛権についても「憲法解釈」を変えてでも行使できるようにするべきだと考えている。

・日露関係
冷戦中は、日本はアメリカの手下としか思われていなかった。冷戦後も暫くはそうだったはずだが、よくよくアジアを見渡してみると、相手にできるのは日本しかいなかった。冷戦期の日露関係は総じて暗かったが、これからは明るい日露関係を作ろうと提唱した。
ロシアは、「自由と繁栄の弧」構想を気にかけていて、ロシアも入れてくれといってきたが、入れると「輪」になるのでその真ん中あたりの国が怒るからできないと説明した。ロシアにも、「自由と繁栄の弧」の国々のco-runnerとして併走してくれといっている。

・日印関係
これから益々重要になってくる国。インドは、これまで非同盟諸国の雄だったため、今後はアジアの諸事に関与させていくことが重要だ。

・日韓関係
大統領の交代で、日本にとっては良い方向になると思う。これからは、日韓で、できれば日中韓で、共同事業、例えば渤海湾の浄化など行っていけると良いと思う。

・日朝関係
北朝鮮とは、対話と圧力の段階ではない。日米で構造協議をやったが、このとき日米で互いの国の制度に手を突っ込みあって協議したように、これからは、協議と圧力にするべきだと思っている。拉致を解決しない限り、日朝国交交渉に入る必要はない。オールorナッシングかといわれると、必ずしも全員が生きていると信じたいがそうではないかもしれない。国として、3人から5人でも生きている人が帰ってこられることがあって、さらにそのほかの方々についての調査などが続けられる状況になるのであれば、燃料の提供など、一部の援助を少しずつ実施するということについてはやぶさかではない。ただ、外交も、日本国民とともに歩く外交を実践していかなければならないので、被害者やその家族の方々の痛みに思いを致して、他のすべての国々が核問題も解決して、援助に回ったとしても、拉致が何らかの解決を見なければ日朝国交協議を再開するなどの妥協をしてはならない。

・テロ等
もちろんいろいろなことがこれからの日本にとって大事になるが、全部大事だとはいえないわけで、日本の政治をはじめ、いろんなセクターで対応していくべきだ。経済界は、やはり日本と関係の薄い国や中進国、後進国に進出する際に、最終的には政治行政が骨を拾ってくれるんだろうなということで、バックアップが必要だ。これは積極的に支えていかなければならない。



4.その他
(1)「自由と繁栄の弧」についての補足
外交は国益を追求することなので、本来は首脳が変わっても継続性が保たれるべきだ。ただ、日本の政治家の問題のあるところで、前任者が言っていたことは、なんとなく否定的に、横にやってしまう。外務省にいたとき、省の宿弊とも言うべき性質で「事なかれ主義」というのがあった。それを壊すために、何かしらのことをやりたかった。それが「自由と繁栄の弧」や、日米豪印の枠組みなどにつながった。日米豪印の枠組みは、日本が積極的に提唱したもので、アメリカなどは、中国を刺激するのではないかとか、豪、印はどうだろうかと躊躇していた。それを日本が説得して作った枠組みだ。これからできると思うが、日米中の枠組みも作るよう努力していた。韓国が大反対して、とりやめになったが、かつて嫌がっていた中国も今は乗り気になっているし、韓国に気を使っているアメリカをどうするかというところだ。アメリカの国務省筋は、これらの件でも拉致の件でも、非常に及び腰だ。


(2)日本のODAについて
日本外交にとって、ODAとは、大変な武器だ。その大部分は外国から評価されている。予算のことは分かるが、その件だけで一律に削除するのは、よくない。かつては、経済協力局の話は、全く上のほうにあがってこないで現場で決めていたような状態だったが、最近では官邸に会議もできたし、外相のリーダーシップ発揮できる省内の体制もできた。かつて無いほどに議論をされる対称になっている。器はできたので、これから政治のリーダーシップを発揮してほしい。
中国の資源外交というのは、国内事情や日本の常任理事国入り阻止の際にいろいろと手段を講じて行われた。中南米やアフリカ、欧米の大使クラスなどと会うと、大抵の人々は眉をひそめている。中国の援助は、議会議事堂や、競技場など目立つものをつくるので、一時的には感謝もされるが、あからさまな政治意図が裏にあったり、無償での渡しきりの資金が、いつまでも感謝されるとは思わない。無償であるために、中国から囚人を連れて行って作業をさせるので、その労働従事者が帰国せずに居ついて、現地住民とトラブルを起こしたり、暴動を起こしたりして問題になっているところもある。日本の援助は、橋やトンネルなどのインフラなどで、派手さはないが、長期に確実に経済効果を出す。無償でなく有償であることで経済の振興意欲もわく。中長期的にどちらが選ばれ喜ばれるか。日本は地道な努力をしていけばよい。


(3)これから日本は、アジアを将来的にどうして行ったらいいか。
日本は、「自由と繁栄」を求めて立ち上がる国は、どこの国でも応援する。ただ、日本は「民主主義の普及」はそれに入れていない。人権などは重要だが、普遍的なものではないし、民主主義の捉え方は国それぞれであっていい。ただ、人権や民主主義を根付かせることそれ自体は結構なことなので、中国などでももっと根付かせるよう努力してほしいと思う。日本は、「事なかれ主義」で日中協議などでもこういうことを言って相手を刺激しないようにするが、そんな遠慮は要らない。言うべきことは言えばよい。議論をすることで相手に軽蔑されることはない。
アジアは多様な民族がいるが、ヨーロッパだってそんなに同一性があるわけではないし、第二次大戦まであれほど殺しあっていた。これから50年から100年のタームで考えれば、これからアジアもヨーロッパのような共同体のようになっていることはできるはずだ。アジア共同体というと、中国の影響下におかれるのではないかとか、いろいろ批判があるのも事実だが、日本は日本として独自の発信、アピールを地道にやっていけばよい。中国と日本とどちらが魅力ある国か。現在のみならず、これまでの累積的貢献度が重要だ。


(4)なぜ日本外交は、受身、事なかれ主義になってしまったのか。
日本は戦争で負け、アメリカの意向を受けてなんでもせざるを得なかった。中国などの問題にしても、アメリカの意向を忖度して、余計なことを言って刺激をしないようにしてきたが、それが今体質として残ってしまった。ただ、元公務員として、言わせてもらえば、今の公務員たたきはひどい。公務員は、何も天下りや利権を楽しみにして仕事をしているのではない。報道でたたかれているほど悪いやつばかりではない。外務次官のときのカウンターパートだったシンガポールの外務省のトップなどは、年収で言えば4倍ほどだった。私の世代でさえ、民間に行った大学の同期と比べたら、10年も経てば年収では相当な開きが出た。この仕事はやはり志がなければできない。今は東大の最も優秀な学生は、外資系企業に行くらしい。世界のしっかりした国では官僚機構もしっかりしている。イギリスなどでも、公共に奉仕することは尊敬され、優秀な学生が公務員になる。いい人材=東大卒ではないが、日本でもいい人材が公務員の職につくようにしてほしい。

UNQTE



−吉良州司−

 

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