「アフガニスタン情勢についての講演3」
「国連安保理のアフガニスタン訪問に関するブリーフィング」
大島 賢三 独立行政法人国際協力機構(JICA)副理事長 / 前国際連合日本政府代表部大使
国連大使時代には、アフガニスタンとは人道問題などで折衝してきた。タリバン政権とも交渉を行ってきた経験がある。
国連安保理の非常任理事国だったときには、日本はアフガニスタンに対するリード国として決議案作りなどに関与した。昨年11月にアフガンに訪問をした。ミッションの報告書は別途。
平和構築については、国際平和構築委員会を国連に作って取り組んでいる。アフガンは比較的しっかりとした国連関与の枠組みがあるということで、ここでは現在ブルンジやシオラレオネなどを取り扱っている。日本は現在二代目の議長国として尽力しているところ。
平和構築の鍵は、(1)ガバナンス、(2)治安、(3)人道・復興開発だ。これらは全ての平和構築において鍵となるが、それぞれの国の事情も絡んでくる。
アフガニスタンにおいては、(1)ガバナンスと(3)人道・復興開発は国連で担当し、(2)治安は、OEFやISAFといった多国籍軍のミッションが関わっている。アフガン訪問時には、そういった多国籍軍のOEFやISAFの司令官などとも意見交換をしてきた。
アフガン戦争後のボン和平合意に沿って、アフガンには大統領や議会議員、行政府が誕生し、行政「制度」は出来上がった。復興については、国連や各国の支援で徐々にでき始めてもいる。昨年ロンドンで採択されたアフガンコンパクト(協約)においても、向こう5年間の復興計画についての枠組みが決まった。マイナスからのスタートだった。
制度面では行政機構はうまくできたが、それですぐに統治がうまくいくものではない。まだまだ国が中世的な要素を残しているところもあるし、政府も役人も力不足だ。閣僚も、2、3人を除いてほとんどが海外からの帰国組みで、ソ連侵攻や内戦に際して国外に退避していた人々。また軍閥も多いし、麻薬や腐敗などの問題も多い。
タリバンは、警察力の未熟な状況や、腐敗などの状況を利用して徐々に復活してきた。
また「平和の恩恵」を末端の市民まで十分にいきわたらせられていないこともタリバン復活の一因となっている。タリバンが末端の不満を吸収した形だ。
治安問題、警察・国軍の整備が進んでいない。まだ軍閥がはびこっているが、アフガン全土の危険地帯は、国連が作成したアフガンの危険度地図では昨年は36%だったが、今年は12%になった。凶悪化している面や、新たに指定されたところもある。
治安事件も1ヶ月当たり100件以上起こり、自爆テロも増加、ISAFなどは効果を挙げており、タリバンも正面からの攻撃ではなく、テロやゲリラ戦などに戦術を転換している。ただ、せっかくISAFなどが治安をよくしても、アフガン警察や国軍がそれを固められないでいる。国軍そのものや、管轄する内務省などでも腐敗が問題となっている。
また、ISAFの掃討作戦は、空爆などで市民の巻き添え犠牲が多いという声も多い。こういったところも、市民の不満を醸成してしまう。
アフガン統治に関しての器はできた。後はいかに運用していくかが問題となる。
ISAF、OEFの活動継続は、今後必須だ。警察、国軍の整備や、復興支援も必要で、地方制度の整備なども必要だろう。
隣国パキスタンの協力も必要だ。国境の山岳地帯は大変なところだ。テロリストが逃げ込んで、パキスタン政府も黙認しているかのようなうわさは絶えない。パキスタンは、この国境地帯に10万の軍を展開して、1000箇所に及ぶ検問所を設置し、国際社会の疑念を振り払おうと懸命のようだ。
人道支援についても必要だが、大規模なものとなればやはり治安問題がネックとなる。治安能力を高めるよう、政府支援をすることも一つの手だろう。
質疑応答
Q.PRTが重要になるとの事。JICAが作ったアフガン支援マップにもいろいろと支援のことが書いてあるが、これらとPRTの関係はどのようになっているか。
A.JICAのマップは、二カ国間支援であって、PRTとは違う。JICAも、日本人スタッフ40人、現地人スタッフ56人で様々な事業を行なっているが、カブールに多くのプロジェクトがあり、カンダハル、マザリシャリフなどにも点在している。ただ、7月の韓国人誘拐事件以降、日本人40人のうち37人がカブールに集中してしまっており、遠隔操作での進行をしている。
Q.治安の回復が最優先だと思う。ドイツやアメリカが警察部門の支援などを行なってきたが、日本としてもできることはないか。
A.治安セクター改革は、きわめて重要だ。復興期には各国で共通しているキーポイントだ。アフガンでは、例えば研修員を日本に呼んで研修をするということが考えられる。治安状況などから、日本人が向こうへ行って研修に携わるということは難しいのではないか。
Q.パキスタンの状況はどうか。アフガン化してしまわないように、各国から支援をする必要があるのか、自力でやっていけるのか。
A.トラボラ地域など国境周辺は、大変な地域。山岳地帯が続き、遅れている。これらの地域では、自助として住民が麻薬栽培など不法活動している部分もある。国境地域に向けては、パキスタン政府も地域開発や、軍による警戒などアメとムチを併用するようになった。末端の民間人にまで恩恵が及ぶように民生支援の拡充も大事だ。
Q.パキスタンで民生支援を拡大することは大切だ。ただ、日本人が直接入ってやるということは現状難しい。そうすると、日本人に協力してくれる、例えばかつて入り込んでいた会社の現地従業員などのチャネルを活用することが重要になってくる。そういった、現地人チャネルの確保や訓練などはどうなっているか。
A.治安情勢が一番大事な状況。日本人が入れればいいがそうではない。現地人を使って遠隔操作による援助活動もできなくはないが、やはり限界がある。人数など一定の強化はできても、おのずと限界が出るだろう。
−吉良州司−