活動報告

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「アフガニスタン情勢についての講演」

 講演:「テロ特措法について」伊勢崎賢治 東京外語大学教授
                          元アフガンDDR日本政府特別代表


伊勢崎賢治氏プロフィール:
イギリス本部の世界最大級NGO Plan International の現地事務局長として10年間、アフリカのシエラレオネ、ケニア、エチオピアに勤務。その後(財)笹川平和財団主任研究員として日本紛争予防センターの設立を担当。パレスチナの現地NGOへの助成事業を通じて中東和平に関わる。国連東チモール暫定統治機構(UNTAET−United Nations Transitional Administration in East Timor)の上級民生官として暫定政府の県知事を務める。国連平和維持軍、国連軍事監視団、国連文民警察を統制し、内戦後の東チモールの県政復興と治安維持を指揮する。
国連シエラレオネ派遣団(UNAMSIL−United Nations Mission in Sierra Leone)国連事務総長副特別代表上級顧問(行政復興部門)兼DDR(Disarmament, Demobilisation and Reintegration−武装解除、動員解除、社会復員)統括部部長として、シエラレオネ共和国で5万人の武装ゲリラを武装解除させ、10年余り続いた同国の内戦終結に資する。
アフガニスタン武装解除日本政府特別代表として、日本がリード支援国であるアフガニスタンにおけるDDRの企画、敵対する軍閥間(兵力6万)の信頼醸成と政治的合意形成を行なう。



詳細:

  • 日本人には、この問題について当事者意識を持って議論していただきたい。「国益」の観点から考えれば、
      インド洋上での給油は、日本人が誰も死なない、金も大してかからないということで、非常によいことで
      あるのは疑いのない事実だと思う。ただ、アメリカが始めたとはいえ、これをいかに成功させるかという
      観点からの議論が日本国内にはないように思われる。


  • OEF(Operation Enduring Freedom−不朽の自由作戦)、ISAF(International Security Assistance Force−
      国際治安支援部隊)の切り分けは、OEF、ISAF両方に軍を出しているドイツのような国でもしっかりと
      なされており、携行している武器の火力の違い、使用基準などはまったく違うものになっている。


  • アフガンSSR(Security Sector Reform−治安分野改革)は、治安分野の改革のために、戦略プランナーたる
      アメリカが取り仕切ったが、テーマごとに担当国を割り振りしてきた(日本−DDR、アメリカ−新国軍整備、
      ドイツ−警察整備、イタリア−司法改革、イギリス−麻薬対策)。


  • 北部同盟は、アメリカがタリバンと戦うために味方につけた。アフガンのような山岳戦では、どんなに最新の
      兵器をもっている外国の正規軍が入ってきても、地元ゲリラには勝てない。北部同盟の力が不可欠だった。


  • 北部同盟を武装解除することは、下手をすれば北部同盟を怒らせ、タリバン側につけてしまいかねない難しい
      ミッション。政府側に武力行使能力がまったくない中では、対タリバン戦略から考えても「力の空白」の問題を
      生みかねない。そのため、武装解除は、SSRの枠組みで新国軍の組織と同じくして行なう必要があった。


  • 武装解除は、日本が支援をして大成功。しかし、SSRの枠組みでは失敗。警察、司法、麻薬は惨憺たる状況。


  • SSRでは、新国軍が約5万人の兵力で生まれたが、その内1万はまだトレーニング中。警察は6万の規模になったが、
      腐敗が横行しており、司法もあったものではない。麻薬対策は完全に失敗し、いまやアフガンは世界で流通する
      ケシの95%を生産するまでになった(アフガンは「史上最強の麻薬国家」)。


  • 当初武装解除は、全軍閥の部隊を対象としていたが、カルザイ政権下で国防省・内務省の省益意識が進み、
      軍閥の管轄分けが行なわれ、内務省管轄の軍閥が武装解除の対象からはずされた。日本は国防省管轄の
      軍閥を武装解除した。


  • 武装解除は、国防省改革を条件に実施。不十分であれば日本からの援助資金をストップするという脅しも使いながら
      武装解除を進め、成功。


  • 2004年の米国大統領選の前に、アフガンでの「成果」が必要な米政権から、アフガンで早期に何らかの選挙を
      するよう迫られ、比較的実施しやすい「大統領選挙」を実施。その実施のために、地方警察官の粗製乱造。
      →約5万人の内務省管轄の軍閥(治安)部隊に制服の着せ替えをさせただけという批判もある。


  • アフガン警察は軍閥時代の腐敗体質をそのまま受け継いでしまい、米軍現地トップのアイケンベリー中将をして
      “Ten good police are better than 100 corrupt police and 10 corrupt police can do more damage to our
      success than one Taliban extremist”(10人の良質な警官がいる方が、(今のような)100人の腐敗した警官が
      いるよりましだ。また、10人の腐敗した警官は、私たちの成功に対して1人のタリバン過激派よりも大きな損害を
      与えてくれる。)と言わしめた。


  • 元軍閥や旧軍司令官などは、武装解除により「免罪符」を与えられ、一部は政治家となり、半ばマフィア化している。
      彼らの資金源としてケシ栽培が増加しているところもある。南部へルマンド州(最大のケシ生産地で、世界で
      流通するケシの5割を生産)では、英軍司令官は「誰と戦っているのかわからない」といっている。また、
      内務省副大臣も「タリバンより元軍閥の方が怖い」といっている。


  • 元軍閥が跋扈している現実から、DDRの後継として、GOLIAG(government-linked illegal armed group−非合法武装
      組織と関係のある政府関係者)の解体や、DIAG(Disbandment of Illegal Armed Groups−非合法武装組織の武装
      解除)の必要性が指摘されるようになった。


  • OEFの戦闘に巻き込まれる市民の被害(二次被害)を減らすことができなければ、市民感情は反米、反国際社会で
      まとまり、泥沼化してしまう。ISAF、PRT(Provincial Reconstruc-tion Team−地方復興チーム)の関係者でさえ、
      ミッションに悪影響が出るとしてOEFの中断を求める例も出ている。


  • タリバン過激派は別として穏健派と政治的和解をしなければならない。今年3月の恩赦法はその第一歩。今般
      開かれたベルリンの会議でもそのことに多くの時間が費やされた。


  • 日本はまず、米軍にとって、イラク戦、アフガン戦は、一直線上にあったということを再認識すべき。部隊、装備品の
      シェアなどは、よくあることだ。


  • 自衛隊のインド洋輸送給油活動は、認知度ゼロ。カルザイ大統領でさえ、実態は知らないのではないか。これは、
      悪い面ばかりでなく、武装解除の成功要因でもある。日本は、「中立」国であると見られており(美しい誤解)、
      米国の責任範疇であった国防省改革も、日本が介入して成功することができた。


  • ただし、首相の辞任劇で、世界的に給油活動が「認知」されてしまった。これは、自殺行為だ。邦人の安全に大きな
      影響が出る。これまでは自衛隊にも民間人にも、犠牲者はいなかったが。アフガンについては、外務省やJICA
      (The Japan International Cooperation Agency−独立行政法人国際協力機構)などでさえ、出て行けない治安
      状況が最悪だったときに、政府は第1回アフガン復興東京会議を開いてNGOによる支援の「道」を作ってしまった
      経緯があり、イラクであったような、危険なところにそれを承知で勝手に行ったのだから、という「自己責任論」は
      当てはまらない。もしPRTとして陸自を派遣するようなことがあれば、さらに邦人を危険にさらすことに
      なりかねない。

  • 伊勢崎氏の意見:

  • インド洋の補給活動も含めて全ての軍事的協力は停止すべき。


  • 対米的には、(武装解除がそうであったように)、SSRでの協力は、OEFに直接的、不可避的貢献であると強調
      すれば、米軍関係者は必ず納得するはず。


  • 日本が中立であるとの誤信(美しい誤解)の保護と、これを最大限に利用したSSRの再構築をすべき。日本は、単体
      事業としては成功であったとしても「武装解除はSSRの観点から失敗であった」と宣言し、SSR再構築を次の最重要
      国際協議事項にすべき。


  • SSR再構築を実現すべく、日本政府アフガンSSR特命大使を任命すべき。その大使の下、日本大使館で数名の
      グループを組み、DIAG事業の政治的地位向上と、それを切り口とした内務省の抜本的改革をすべき。ただし、
      困難さは国防省の比ではなく、国際社会として強い政治的意思が必要。また、GOLIAGをターゲットとして、
      政界の浄化も必要。さらには、タリバン穏健派と政治的和解をし(EU諸国もそちらに傾いている)、そのために
      日本が武装解除後の社会復員のプログラムを提供すれば、話が大きく進展する可能性もある。


  • 以下は禁じ手で取るべき道ではないが、北部同盟の優良部隊の限定的・暫定的な復活も考えられる。国防省は
      優良部隊の保持を主張したが、DDRによって全部隊を武装解除した。暫定期間後の全員の復員を日本が
      保証すれば、良質な部隊として治安担当をさせられる。

  • 質疑応答:
    ○カルザイ政権でさえ、海上自衛隊の給油活動を認識していなかったというのは、効果が上がっていないと
      いうことか。また、今後カルザイ政権とはどう付き合ってゆくべきか。
    ⇒タリバンのテロリストや麻薬などは海を経由して動いていないというのが大方の関係者の認識だ。国連のIRAMAが
      提出した自爆テロに関する調査報告書を見ると、イラクとアフガンでの自爆テロはまったく異質なものであると
      分かる。アフガンの自爆テロは、命中率が低く、爆発規模も小さい。また、若者によるものが多いなど、
      多くの点でイラクのものとは違う。これは、イラクとアフガンではなく、アフガンとせいぜいパキスタンの問題。
      日本はアフガンにとってアメリカに次ぐ重要な支援実施国であることを認識すべき。日本は、アメリカの
      懐柔も含めてSSRの政治的なリードを行うべき。

    ○ケシの栽培などに対して、代替作物というのはなかなかないかもしれないが、これだけ世界の先進諸国が
      寄り集まって支援をしているのだから、ケシ栽培は減りそうなものだが、なぜなくならないのか。また、
      なくすには国境警備なども重要だと思うがどうすればよいか。
    ⇒例えば、強制的にケシ畑を焼き討ちすればよいのではないかということも考えられたことはあったが、これは、
      耕作者である農民たちが困窮してタリバン側に走るだけなので、やめるべきだ。軍閥の力もまだまだ強い
      ということもある。やはり、ケシほどの魅力的な作物はなかなかないので、作るのは止めにくいが、流通の
      問題になる。もう一つは、いっそ合法化してはどうかという意見もあった。合法化して、良質な医療用麻薬
      として世界に輸出することも考えられたが、実際上医療用でない麻薬として流通するものをなくすことは
      できない。国境線は長すぎる。これをどうこうしようとするのは、日本の力を超えている。

    ○一度「美しい誤解」がばれてしまった今、政治的にリードといっても、実際問題アフガンで復興に
      寄与できるのか。
    ⇒そうしていくしかない。一度美しい誤解が失われてしまった今、次には大きな花火を打ち上げる
      しか選択肢はない。SSRの復興を掲げていくべき。

    ○国内一般の治安がそれほど良くない中で、カブールではビルの建設ラッシュが起きていると聞く。それは、
      経済復興の証なのか。
    ⇒実際のところ、ビルの建設ラッシュはあるが、オーナーをたどって調べてみると政府高官や閣僚であることが多い。
      やはり、その資金は賄賂などであって、経済復興の証ではなく、腐敗の証であると考えるべきだと思う。


    −吉良州司−

     

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