活動報告

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2006年10月18日(同日発行メルマガ)「北朝鮮問題 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹氏の話」

みなさん こんにちは!
吉良州司です。



今、みなさんが一番興味を持たれている北朝鮮の核実験につき、最近知り合いに
なった軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹氏がに話を聴きました。


以下、鍛冶氏の簡単なご紹介と、その際にお聴きした内容につき、報告させて
戴きます。


(会談は基本的に、吉良州司が鍛冶氏に質問を投げかけ、回答していただくという
形で進みましたので、Q&Aの形で掲載いたします)



○鍛冶 俊樹(かじ としき)氏(以下、敬称略)
 軍事ジャーナリスト。元航空自衛隊将校。航空自衛隊在籍中から情報関連任務に
 携わり、情報戦略などに詳しい。著書に「戦争の常識」「エシュロンと情報戦争」、
 雑誌 諸君、Will、正論などにも記事を寄せています。専門家ではあるが、一般の
 人にわかりやすく伝えことをモットーに活動されています。


【鍛冶】情報機関は第4の軍隊。陸→海→空、と歴史的に発展してきた軍隊の発展
 課程で空軍に続くもので、これほどコンピューター、情報技術が発展してきたら
 非常に重要なものになる。


【吉良】Q 北朝鮮のミサイル発射について、発射の予兆を捕らえたのは、衛星情報
 のみではなく、対人情報(ヒューミント)によるものもあるのか。
【鍛冶】A 衛星情報だけでは、天候にも左右される。これほど脱北者が増えている
 中で、北朝鮮と行き来をしているものもいるので、その可能性は高い。
 特に、中国は軍自体が北朝鮮軍と仲がよい。ロシアは、北朝鮮軍人が留学する
 地でもあり、両国とも息のかかった人間がいるはず。北朝鮮軍人は、国内では
 自由がない。中国やロシアで羽を伸ばしている。軍人の留学など、スパイ養成を
 されて当然だ。
   アメリカがスパイ活動についてどれほどできているかはわからない。


【吉良】Q アメリカは衛星情報に頼りきって、ヒューミントをおろそかにしている
 のではないか。情報の精度が相当悪くなっていると聞いているが。
【鍛冶】A ロバート・ベアという元CIAの人間が引退して「CIAは何をしていたか
 (?)」という本を書いたが、まさにその話はその本の内容に沿っている。
 クリントン政権の時代に、リスクを犯したくない政権が、リスクを伴う対人情報を
 避け、衛星の情報に頼って、オサマ・ビン・ラディンの居場所に巡航ミサイルを
 撃ち込んだりしていた。それではちっともあたらない。クリントン政権はCIA予算
 も削っていた。ベアの本はクリントン政権批判だ。



【吉良】Q 北朝鮮の核実験についてはどう考えるか。
【鍛冶】A そもそも、核実験をやるということは12年前からいわれていたことだ。
  それを12年間やらなかったということ。それは、北朝鮮が瀬戸際政策を採ってきた
  からだ。その瀬戸際政策も、一部については成功している。たとえば、在韓米軍
  の撤退や、韓国に親北朝鮮の政権ができたりということだ。内々に核兵器を開発
  することもその政策に沿ったものだ。
   ただ、金融制裁を加えられれば、軍が干上がり、軍が金正日氏に方針転換を
  迫ったのだと思う。金融制裁を加えられれば、そもそも遠慮している必要はない。
  今回の実験の核弾頭は1トン超だと思うが、500キロまで小型化できればノドンに
  搭載が可能になる。そうすれば日本を狙える。この核兵器保有で、在韓米軍が
  標的になる可能性が高まったことも撤退の一因といわれている。その論理で
  言えば、日本を狙えるようになれば、在日米軍も撤退するのではというのが北朝鮮
  の筋書きだ。
   ただし、北朝鮮の筋書き通りにはなるとは限らない。日米も制裁を加えているか
  らだ。その対応としては、国連決議に基づく、金融制裁や貿易停止などで、海上
  封鎖を行うことになるかもしれない。そうすれば、当然北朝鮮としては、これを
  突破する必要が出てくるわけで、「シルクワーム」などで対艦射撃をしてくる
  可能性がある。そうすれば、米韓は北朝鮮に侵攻せざるを得ない状況になり、
  その段になれば中国は反発して北朝鮮の側に付くはずだというのが金正日氏の
  見方だ。彼は資本主義の論理などわからない。

【吉良】Q 今回の核実験についての中国の考え方、感じ方はどうか。
【鍛冶】A 中国は、これまで相当の援助をしてきたし、北朝鮮は言えば何でも聞く
  国だと思っていた。今回の実験は飼い犬に手をかまれたと思っているはずだ。
  北朝鮮としては、今回の実験をして、中国が怒っている状態については織り込み
  済みのはず。もしかすると、制裁についても海上封鎖までは賛成するかも
  しれないが、第二次朝鮮戦争が起こるという事態に至った場合には、中国は北朝鮮
  の側に付くという確証がある。軍部同士では、そういう話をしているのかも
  しれない。胡錦涛は、軍部を掌握したというが、支持を得たという程度だ。
  北朝鮮は、明らかに戦争への道を選んでいる。海上封鎖による船舶臨検から戦争
  へという道は避けられない。
   韓国では、第二次朝鮮戦争勃発時には国防白書で50〜60万の米軍派遣が必要に
  なるということを書いているが、イラクのこともあり、現状では無理だ。米側は、
  IT化の進展など急派が可能になったことでそれを補っているという説明をして
  いるが。


【吉良】Q ロシアについてはどう動くか。
【鍛冶】A ロシアは、現在好景気だ。北朝鮮はほとんど燃料や機械部品がない。
  ロシアから武器、燃料供給がされなければ戦争はできないが、供給があれば
  動き出す。それくらいはなんでもない。
   金正日氏は、中国・ロシアが当然北朝鮮の側に付くと思っているが、中国も
  ロシアも現在好景気で果たして敢えてそんなことをするかどうか。ただ、
  南北統一に際しては、米韓の主導ではなく、中国もロシアも軍を送って一定の
  利権を確保したがるはずだ。レバノンなどでもそうしている。北朝鮮の北部
  では、中国が事実上の租借地に資本投下して鉱山開発などしているし、その
  確保は当然望むだろう。


【吉良】Q 実際に戦争が起きた場合の北朝鮮の軍事能力は?
【鍛冶】A 38度線は越えられない。燃料がなく、軍は動けない。海上封鎖まで
  行けば、米軍などの艦船に対艦ミサイル「シルクワーム」などを打ち込むこと、
  あとはノドン、スカッドなどのミサイルを韓国に打ち込むかもしれない。
  もちろん、核弾頭が搭載されているかどうかは別として日本にも打ち込まれる
  かもしれない。
   現在の北朝鮮に、500キロまで核弾頭を小型化する技術はない。小型化のため
  には核実験を繰りかえす必要があるがそれを12年間凍結してしまったからだ。
  普通に作れば大体1トンくらいにはなってしまうが、それでは日本に届かない。
  ただ、1トンでもミグ29などに積めないことはない。ソウルは近いし、北朝鮮
  としても韓国には使いたくないというようなことは言っているようだが、
  在韓米軍には使いかねない。


【吉良】Q 日本の原発が攻撃対象となることはないのか。
【鍛冶】A ノドンミサイルについて言えば、命中精度が非常に悪い。半径500
  メートルの範囲にあたるかどうかだ。原発にはあたらない可能性が高い。憂慮
  すべきは、特殊部隊が潜入して占拠されること。北朝鮮は生きた核爆弾を養成
  するために日本人を拉致し、日本語を教えさせたといわれている。しかし、
  逆に言えば、有事にならなければ、日本ではテロは起きないということだ。


【吉良】Q 現在摘発を受けている北朝鮮に近い建設会社が福島県の原発関連工事
  を受注していたのはスパイ活動の一環だったのか。
【鍛冶】A 北朝鮮と取引関係があると、(向こうからの工作もあり)スパイ活動
  をするようになってしまうのは仕方がない。改革とはいえ、なんでも一般競争
  入札の対象にしては、このようなことになる。どこの国でも、軍事産業は特殊
  産業として指定を受け、その代わりに会計監査をうけているのだから、日本も
  そうしなければならない。


【吉良】Q 米英をはじめとする各国の情報機関では、金正日氏の位置情報を
  正確につかめているのか。
【鍛冶】A それは知りたいところだが、金正日氏は、雲隠れしていて、影武者も
  いる。一筋縄ではいかない。別荘地をいくつも作り、転々としているようだ。
  金正日氏は北朝鮮軍部にも命を狙われかねないのも雲隠れの理由だ。これは、
  ソ連崩壊後の旧ソ連軍がロシア軍として生き延びたように、国家と軍隊の微妙な
  関係からくる。軍部は、指導者を変えればよいと思い始めているかもしれない。
  指導者を変えるか、一気に集団指導体制に持って行き、改革開放といったところ
  で、軍は生き延びられる。


【吉良】Q 全く仮の話として、戦争状態になった後、金正日氏がイラク・フセイン
  大統領のように、雲隠れしたりした場合、軍はどの程度任務に忠実であり続けら
  れるのか? 戦争がおこれば、日本には国土防衛と拉致被害者の救出という2つの
  要請が出てくるが、拉致被害者の救出の際の問題点などをお聞きしたい。
【鍛冶】A 金正日氏よりも拉致被害者の位置を特定するほうが容易なはずだが、
  アメリカはリスクを犯してまでそれをしてはくれない。結局は日本がやらざるを
  得ない。戦争が起これば護衛艦や潜水艦が近づき、ヘリを飛ばして救出作戦を
  決行するということは十分に可能だ。戦争になれば、北朝鮮の制空権、制海権
  などは穴だらけになる。


【吉良】Q 北朝鮮軍の士気はどうか。
【鍛冶】A 脱北者が多くなり、一般兵士にも情報は入っているはずだ。まして
  軍幹部はこれだけ金が入らなくなり、ビジネスをする必要がでてきているため、
  その過程で世界情勢に気づいているはずだ。人間はみんな食べ物がなくなると
  そういうことに気づき始める。金正日氏の周辺にはもっとも士気の高い兵士が
  集められているはずだが、横田さんの警備をしている兵士などは末端の兵士で
  あり、士気は低いはずだ。
   金正日氏が雲隠れした場合には、軍は雲散霧消してしまう。イラクでもフセイン
  体制が崩壊するとわかったら、軍は消えてしまった。アメリカの軍事機密になる
  ので詳細はわからないが、情報戦に長けた米軍は、イラクではインフラとしての
  情報網を優先的に破壊したのだろう。結局は、イラク軍は中央からの指令が来ない
  ために、消えてしまったのだ。
   日本も12年かけて、やっとここまで来たということだ。これから、北朝鮮に外科
  的手術をするかどうかという局面。もう戦争は避けられないのではないか。
   イラクやイランのこともあり、アメリカはこのまま北朝鮮を放置することはでき
  ないはずだ。
   ただ、日本も相当の負担をすることにはなる。


【鍛冶】Q 民主党は、戦争の際にはどう対応するのか。
【吉良】A まだ党内でも統一した考えができているわけではないが、個人的には
  北朝鮮の有事を政争の具にするべきではないということを明確にすべきだと思う。
  一旦は、安倍政権を助けることになったとしても、まずは同一歩調をとる。その上
  で、こちら側にしかできない北朝鮮の崩壊後のシナリオや、復興過程を考慮して
  の提案をするべきだといっている。単に政権の足を引っ張るようなことだけは
  避けなくてはならない。
 
【吉良】Q 私自身アメリカは大好きな国だが、時にはアメリカに「No!」と言える
  日本を創ることが必要だと思っている。その為には、自主防衛力の整備が必要だ。
   ただ、自主防衛力の整備と言っても、その程度がどれくらいなのか具体的な
  構想、計画を立てる必要があり、それをこれから考えてゆきたい。
【鍛冶】A 現在は、防衛費を減らされている。その中で、さらにミサイル防衛だ
  何だということで、いろいろと難しい。こういう強く、インパクトのある意見が
  出てくるとよい。今の自衛隊は、冷戦期の構造を脱しきれていない。屯田兵の
  ようで、実際有事に動ける状態かどうか。統合幕僚会議を作ったが、実際の
  陸海空の各隊の関係はどうか。仲はよくない。実際機能するようにしていかな
  ければ。
  
【吉良】 経済面では先進国になったが、まだ国の仕組みは発展途上国のままだ。
  民主党も今の状態を批判するだけでなく、長期的視点に立ち、国の仕組みをも
  先進国のものに変えていくにはどうしたらよいか提案をしなければならない。
  その途上国、先進国両方の仕組みが並存せざるを得ない現在のような端境期を
  どうするかということが今もっとも興味のあるテーマで、勉強して行きたい。
   今回は第1回ということで、またいろいろと教えてほしい。


−−吉良州司−−

 

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