活動報告
「共謀罪について」メルマガ69号
みなさんこんにちは 吉良州司です。
先日は今国会の重要法案の一つである教育基本法案について私の考え方などをお伝え しましたが、今回はいわゆる共謀罪法案についてお伝えしようと思います。
まず、共謀罪を巡る経緯は次の通りです。
2000年11月 国連で「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下、国際組織犯罪防止条約)」が
採択される(同年日本も署名)
2001年11月 国連で「サイバー犯罪防止条約」が採択される(2005年国会で承認)、
2003年5月 第156回 国会にて国際組織犯罪条約を承認
2003年3月 犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部改正案提出
(現在も与党、民主党それぞれから修正案が出され、審議が続いています)
※国連組織犯罪防止条約は、国際化、複雑化する犯罪を防ぐため採択されました。 念頭にあった犯罪の例として、麻薬取引、(女性や子どもの)人身売買、不法入国の斡旋などが挙げられます。2001年9月に起きた米国同時多発テロ発生により、テロ対策が大きな柱の一つとして重視されるようになりました。
この法案についての問題点を次のように整理してみました。
(1) 共謀罪について
条約では重大な(4年以上の懲役や禁錮が規定されている犯罪)国際犯罪などを念頭に採択されました。法案では、国内で行なわれる犯罪一般について共謀罪を新設するもので、条約の要請を大きく超え、捜査機関による濫用の恐れもあります。証人等買収罪については、弁護人が証人との打合せを飲食店で行なえば“買収”とされたり、「この点を裁判で証言して欲しい」と特定して強い口調で言えば“威迫”とされかねないなどの問題点があります。
(2)サイバー犯罪防止条約について
電磁的記録の保全要請の規定が曖昧で、捜査機関が過大に記録を押収したり、必要以上に長期間に渡って何度も保全要請しかねないという問題点があります。個人のプライバシーを、捜査機関が検閲することになりかねないという問題点もあります。
民主党の修正案と現在の審議状況
この法案はそもそも国際化する組織犯罪に対して国際社会が一致団結して世界共通の水準で犯罪を予防しようとするものです。法案作成段階において、米国同時多発テロを契機とした世界情勢の変化の影響を受けたことにより、犯罪の謀議を行なうことそのものも犯罪となる「共謀」が重要視されるようになりました。また、サイバー犯罪防止の目的も加わり、共謀を探知する目的も込めたと思われるメールやインターネットなどの監視を広範に可能にする条項が入り、多くの懸念の声が上がっています。
与党、民主党は各々これらの声に応じて問題点を是正する修正案を提出しました。民主党修正案では、憲法上の権利を守る規定や労働団体、弁護士などの活動を制限しないようにする規定を設けました。また、犯罪の成立条件や適用される団体そのものを厳しく限定しています。ウィルスの作成頒布等についても犯罪の成立要件の限定をし、電磁的記録の保全の期間や回数、範囲を制限する規定を設けています。
最大の対立点は、共謀罪が新設される「重大な犯罪」の捉え方です。与党案が条約通り「4年以上の懲役または禁錮が規定されている犯罪」としているのに対し、民主案では、「5年以上の懲役または禁錮が規定されている国際性のある犯罪」に限っています。
刑期の違いは1年ですが、与党案では619件もの犯罪が該当するのに対し、民主党案では306件の該当(更に「国際性があるか」を個別判断する)と、与党案に比べ限定されます。
与党は国会終盤になって民主案を丸呑みし、次期国会で与党案に“改正”するというシナリオを立てましたが、麻生外務大臣、外務省は「重大犯罪の基準を変える事は、条約の根幹を変えることになり、民主案では条約を批准できない。既に署名国147カ国中121カ国で条約は締結され発効しており、日本だけが内容を変えて締結することはできない」としています。
一方民主党は、条約を一字一句全てそのまま受け入れる必要はなく、条約の趣旨を生かせるのであれば構わないと反論し、意見は対立しています。
私は、国際社会全体が協力することにより、国際化するテロ等の国際犯罪から自国民を守ることは必要不可欠だと考えており、その意味において、法案を全面否定すべきではないと思っています。しかし、だからといって、共謀罪に名を借りて、信条の自由、精神の自由、言論の自由までもが、度を越えて侵されるようなことがあってはならないと考えています。その意味で、その「度」はどこまでが妥当なのか、拙速を戒め、慎重に議論すべきだと考えています。
吉良州司