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国会発言録

No.014 164回国会「衆議院 外務委員会 17号」  2006年05月26日


⑧平成18年5月26日 外務委員会
○原田委員長 次に、吉良州司君。

○吉良委員 民主党の吉良州司でございます。
 今、同僚の篠原議員が、プロらしく、海の資源についての質問を、持論を踏まえながら展開されましたので、私の方は、冒頭、条約十三号の危険物質及び有害物質についての質問をさせていただきたいと思っています。
 まず、現在当該条約を締結しているのはシンガポールだけで、我が国が締結すれば二国目になるということですけれども、このおくれている原因の一つが、対象となる物質というのが非常に種類も多くて、その物質の性状が異なるということもあって、化学的、法的、そしてマンパワー的に、国内の整備をするのに時間がかかっているのではないか、このように認識をしておるんですけれども、その認識が共通のものであるかどうかという点がまず一点。それから、過去日本が、そういう危険物質等の事故が起こった際に、実際に日本の技術力でもって解決した事例がどういうものがあるのか。まずその点についてお伺いをしたいと思います。

○神余政府参考人 御質問にお答え申し上げます。
 締約国でございますけれども、現在は十四でございまして、確かにシンガポールも締結をしておりますし、その他、オランダ、スウェーデン、エジプト、スペインなどなど、批准をしてございます。それで、スロベニアが入って十四になったということなんですけれども、このほか、イギリス、アイルランド、ドイツ、フィンランドなどが、締結のための手続を進めているということでございます。したがいまして、日本が締結を進めて十五ということになればこの条約は発効する……(吉良委員「アジアの中では」と呼ぶ)アジアの中でございますか。(吉良委員「そういう意味です」と呼ぶ)はい、わかりました。アジアの中では、確かに、おっしゃるようにシンガポールでございます。大変失礼しました。
 それから、どうして時間がかかっているのかということは、まさに委員御指摘のとおりでございまして、さまざまな国内法の関係、あるいはその他、有害物質の範囲、対象となる施設の広範性、そういったものがございますので、今までかかっている国が多いということでございまして、現在、先ほど申しましたように、イギリス、アイルランド、ドイツ等々が、さまざまな観点から、この条約の締結を検討しているということでございます。

○吉良委員 先進国も含めれば十四カ国ということですけれども、ちょっと委員長に発言を求めずに、席について言わせてもらいましたが、アジアの中ではシンガポールと、今ここで審査をしている日本だけということで、今後、先ほど言ったもろもろの整備確立には時間がかかるだろうと思われますけれども、特に日本の技術力、それからもろもろの法整備の経験を生かして、アジア諸国に対してそういう体制整備の支援をしていくことになろうかと思います。もちろん締結してからでありましょうけれども、その辺の、アジアに対する協力についてお伺いできればと思います。

○神余政府参考人 お答え申し上げます。
 確かに、四方を海に囲まれ、外国のケミカルタンカーが多く入港する我が国にとりまして、この議定書が普遍的に適用されるということが望ましいと思います。
 既に、このような視点から、東南アジア諸国、これはフィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ等に対してでございますけれども、技術協力を実施してございます。今後も、主要国や我が国周辺を初めとするこのようなアジアの国々、あるいはさらに広くその他の国々にも、この議定書の締結を働きかけていく所存でございます。

○吉良委員 最初にそのような質問をさせてもらいましたのは、やはり、昨今、テロからどう我が国それから地球環境、また海洋環境を守っていくかという視点が非常に大事だと思っておりますけれども、危険有害物質の多くは引火性というか爆発する可能性も高いし、物質の中には毒性を持ったものもある、こういうことでございますので、こういう危険有害物質からどうやって、テロの攻撃から港湾であるとか船舶であるとかを守っていくのかということが非常に重要な視点だと思います。
 我が国におけるこういう有害物質を使ったテロというか、また、有害物質を貯蔵、保存している施設に対するテロ攻撃からどう守ろうとしているのか、その点についての現時点での体制について、お伺いをしたいと思います。

○冨賀見政府参考人 お答え申し上げます。
 海上保安庁では、平成十三年九月、米国同時多発テロを背景として、テロ対策の海上保安庁長官を対策本部長にする本部を設置して、全庁的に港湾セキュリティーの話なり原発警備の話について万全の体制を可能な限りとっているところでございます。
 それと、HNS関係の話につきましても、テロという話もございますけれども、事案が発生した場合におきましては、テロであろうと衝突事故であろうと、局限化を図る対応は同じような対応になるかと思われます。

○吉良委員 先ほども言いましたアジア諸国ではシンガポールと日本だけという状況の中で、先ほど言いました技術的な協力と、それからやはりテロとの闘いといいますか、テロから守るということでの国際的な枠組みづくりというのは非常に重要なことだと思っておりますので、いま一度、テロ攻撃に対する体制と、少なくとも我が国の周辺のアジアにおける枠組みづくりについての現在の取り組みについて、教えていただきたいと思います。

○冨賀見政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、海上保安庁では、JICAなりODAなどで、開発途上国の支援の枠組みを活用しまして、諸外国との海上防災に関する技術支援を実施しているところでございます。
 JICAを活用したものにつきましても、先ほど御説明しましたとおり、発展途上国の海洋環境保全に関する政策立案に対する援助なり、また、ODAを通じましては、開発途上国の現場対応者を研修生として日本に招請しまして、防除能力等の向上に資しているところでございます。
 以上でございます。

○吉良委員 どうもありがとうございました。
 先ほどの私自身の発言の中で申し上げましたけれども、こういう危険物質に対する対応、そして特にテロからの安全確保という点について、日本国内のみならず周辺諸国との協調を進めていただきたい、このように思っております。
 さて、先日の連休に麻生外務大臣が2プラス2の会合を持たれたわけでございます。2プラス2の会合は過去何回かございますけれども、そこで確認をされています、米国そして日本の共通の戦略目標ということも掲げておるところでございます。ちょっときょうは、そういう新しい時代における日米関係で、世界の中の日米同盟、そして世界の中の日本の役割ということにつきまして、私のような若輩者が大変恐縮ではあるんですけれども、麻生大臣にある種の哲学論争を、哲学というような大げさなものではないですけれども、挑ませていただきたいというふうに思っています。
 書生論になってしまうことを恐れるんですけれども、三回ほど前のこの外務委員会の場で私が思いやり予算について質問をさせていただいた際に、住宅ローンの例を引きまして、戦後復興、日本がいわゆる発展途上の段階、経済的に非常に弱かった段階では、軽武装そして経済大国化という国家目標は非常に正しかったと思っている、その際の日米同盟の役割というのは非常に大きかったと思う。ただ、やはり日本が経済的に豊かになった今、ある意味では日本の自主防衛路線というものを目指していくべきではないかというような質問をさせてもらった際に、麻生大臣の方から、そのような書生論というのはなかなか公の場ではやらぬのだけれども、あえてそれをこういう場でやったということは非常に評価する、こういうふうに言っていただきまして、私も褒められるとすぐに木に登る性格でありますので。イラクもそうですし、アフガンもそうですし、南米もそうですけれども、昨今の世界の情勢を見る中で、米国が進めている米国の世界戦略というのは果たして問題がないんだろうか、そしてその米国とより深く関係を持っていく日本、果たしてそれでいいのだろうかという問題意識の中での質問でございました。
 お断りしておきますけれども、今申し上げましたように、これから米国の世界戦略が果たして今の世界なりに本当に適したものなのかということについて問題提起はさせてもらいますけれども、私は前のような野党とは違いまして、反米とかいうようなことを持ち出すつもりは毛頭ございませんし、私自身は五年半米国に住んでおりまして、正直アメリカという国は大好きであります。少なくとも私が知る限り、周りにいる人の中で、少なくともアメリカに住んだことのある人の中で、アメリカを悪く言う人を私は聞いたことがございません。
 そういう意味で、アメリカというのはいろいろな意味で人を引きつける魅力のある国だというふうに思っていますし、今、問題意識で申し上げましたけれども、対外戦略には疑問を持っている。ただ、それはアメリカ人の、またアメリカが持つ底抜けにお人よしなその性格がそうさせるんだろう、このように思っております。そのことを前提として、幾つか麻生大臣に質問をさせてもらおうと思っています。
 まず、先ほど言いました思いやり予算のときに私が幾つか質問をさせてもらった際に、麻生外務大臣の方で、安保条約を結んだ直後に、おじいさんであられます吉田茂首相が、先日亡くなられた松野頼三先生が、やはり本当に自分の、自国の安全を他国にゆだねていいのかということで食らいついてきたときに、松野、おまえ犬飼っているか、ある意味では番犬と思えばいいじゃないか、こういう話をされたということでありました。そういう答弁をいただきました。
 ただ、昨今といいますか、最近は、一家の大黒柱のお父さんが二千円または三千円で散髪屋に行くところ、ペットを散髪屋に連れていくと一万円かかる。また、お父さんが出張に行ってビジネスホテルに四千五百円で泊まっているときに、家族で旅行に行ってペットを預ければ一泊一万円かかるというような時代でありまして、そういう意味では、もともと番犬と、今守ってもらっているアメリカには失礼ながら、そういうつもりで一時的な、経済的に弱くて戦争に負けた直後だから仕方ないんだという思いの中で、松野、犬飼っているかという発言だったと思うんです。
 あのときの質問と重複しますけれども、今これだけ経済的に大きくなって、世界に対する影響力が日本独自でも強くなった今も、日米安全保障条約の中で、自主防衛路線というよりも軍事的にはかなり米国に依存をした体制だと私には見えますけれども、それを維持していることについての麻生外務大臣の御所見を承りたいと思います。

○麻生国務大臣 一九五一年にいわゆる講和条約が結ばれ日米安全保障条約が結ばれた当時は、朝鮮事変の勃発というのが一番大きな条件、もう先生が生まれる前の話ですけれども、朝鮮事変の勃発というのと同時に、いわゆる冷戦という名の戦争が明らかになった、二極構造も明らかになったというのがあの時代、サインをした時代だと存じます。
 それが、一九八九年、ベルリンの壁の崩壊とともに、いわゆる世界の枠組みというものが大きく変わったのがこの十五、六年間。どう変わったかといえば、それはもう間違いなくソ連という国が崩壊してロシア以下十五の国々に分裂、ユーゴスラビアもそう、チェコもという形で、世界の枠組みが大きく変わっていったという中にあって、日米安全保障条約の持っております役割も随分変わってきたものであることが一つ。
 かつ、その間、日本の経済力はもうすさまじいまでに大きくなりましたので、いわゆる軽武装というので、経済重視というのをやらねばならぬという状況から、経済復興というものを確実なものにして、世界第二の経済大国にのし上がったという事実。
 もう一つやはり忘れてはならぬのは、このユーラシア大陸の西半分では確かに冷戦構造は終わっておりますけれども、東半分では朝鮮半島、台湾海峡等々、幾つかまだ不安定、不確実な要素が残っている。以上三つを考えて、日本という国の防衛というものを考えねばならぬということなんだと存じます。
 その中にあって、やはり日本として自国のみの力で完全に日本の安全保障を確保できるかといえば、なかなかさようなわけにはいかないのではないか。したがって、NATOにいたしましても、何らかの形で皆お互いの安全保障という、集団自衛権というのを結んでやっておるわけで、日本としても、そういった中にあって、今状況の変化に合わせて、少なくとも日本は日本のことぐらい、自分のことは自分でやれるぐらいのものをやるべきではないかというまことに健全な意見が出てきているのはいい傾向だ、私は基本的にはそう思っております。
 その中にあって、今憲法の問題とか集団自衛権の問題とかいうのが、これまでの経緯から見まして一つの枠、足かせみたいな形で残っているのも事実です。そういった中にあって、日本がこういった問題を踏まえつつ、今後どうしていくかというときに、やはり忘れられているのは、プライドとか日本自身の誇りとか、そういったもので、何かにつけおんぶにだっこみたいな形になり過ぎるというのは、極めて国民として、国家として非常に大きな危惧を持たれているというのが多分吉良先生の御質問の背景にあるんだと存じますが、私もその点に関しては多くのところを一にするところであります。
 少なくとも、今の段階の中において、日米安全保障条約という、核という問題は、今の事情においてはまだ核というものは厳然として大量破壊兵器として残っている状況の中にあって、核というものを持たずして安全保障を確保しようと思えば、ある程度核を持っている国と友好を、同盟関係を結んでおくというのは、これは皆似たようなやり方をしていると存じます。
 日本の場合は経済力としてはきちんとしたものを持っておりますので、そういったものを大事にしながら、今までのところ、この六十年間、少なくともアメリカとの関係を極めて密にしてきたがゆえに日本の安全保障は保たれてきたのも事実でしょうし、また、今、日本とアメリカとの関係があるから他国は、日本だけが何となく自主防衛のみでわあっと巨大な経済力を背景に強大な軍事大国にのし上がるということを、近隣諸国でも余り期待をしていないという点もあろうと存じます。
 バランスの問題なんだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、基本は、自分の国は自分で守るという気構えというものが大切なんであって、それで足りないところをいわゆる同盟関係でというのであって、基本は自力で自立していくというところが一番肝心な心構えなんだと思います。
 いろいろな意味で、この六十年間、意識が随分変わってきたとは思いますけれども、基本というのは常に、六十年前と同じ、自分でやらねばならぬことはやらねばならぬ、やれる範疇を、足りない分を補ってもらうという発想が基本だと存じます。

○吉良委員 今麻生外務大臣の方から何点か、日本が経済大国化した今でも日米関係の必要性ということについてお話をいただきまして、今御指摘いただいた点については、私もある意味ほとんど共有させてもらっています。
 自主防衛路線といいながら、本当に今の日本の国是で核を持たないという中で、現実に核を持っている、核を持っているぞとわいわい自分で宣伝して回ってミサイルをぶっ放すような国がまだある中で、核に対する抑止力という意味で米国が必要なことは十分わかっておるんでありますが、私は、日米関係、日米同盟というのは、本当に日本にとって最も大事で、日本を安定、維持発展させていくために本当に基軸だとは思っています。ただ、どうも国際的なもろもろの事象に対して、日本として、もしアメリカから守られているんではない、仮に日本が自分の国は自分で独自に守れているとすればこういうときにこういう行動をとるのかなというようなことまで、実際アメリカの顔色をうかがいながら、やはりアメリカから嫌われたくないという行動があるような気がします。
 実際、私は、これは個人的に、イラク戦争への参加、自衛隊の派遣についてどういうふうに自分の地元で申し上げているかというと、私は今野党という立場、個人、一国会議員だけれども、本当にこれは大義なき戦争だと思って反対をします、日本が参加すべきではない、国益にも沿わないと。また後でもうちょっとその背景も言わせてもらいます。けれども、仮にこの不肖私が日本の総理大臣になったら、間違いなく派遣をします、これは民主党から石が飛んでくるかもしれませんけれども、そのように答えております。
 というのは、実際、北朝鮮の脅威があり、日本海、台湾、それから潜在的にはロシアという、先ほどおっしゃった、西の方はソ連の消滅で安定し始めても東アジアというのはまだまだ不安定要素が多いという中で、やはり自国の存立をアメリカにゆだねているところで、アメリカからの強い要請にノーと言えるような自由は日本にはない、私はこのように思っていまして、だからこそ、一個人としてどうだと言われれば反対だけれども、一国の首相として、ミサイルが飛んできたら困る立場の、一億二千万人の命を預かる立場からすれば、派遣せざるを得ないんだろう。だけれども、そういう国であり続けちゃいかぬのだ、きちんと、アメリカさんそれは間違っている、日本としては、こういう方針のもと、こういう国益追求の中で、自分としては別行動をとるというようなことを言えるような国になるべきだと思っています。
 先日、連休中に米国ワシントンに行かせてもらったときに、いろいろな方とお会いさせてもらう中で非常に印象的だったのは、共和党系であれ民主党系であれ、イラク戦争を開始するときには非常に強硬論で、やれと、フセイン政権打倒と言っていた人たちまでもが、今、あれは間違いだったという反省をしておられるというような方々に何人かお会いして、それを聞くにつれて私が最近見直しておりますのは、やはりフランスの対応であります。
 今ここに、国連安保理におけるドビルパン・フランス外務大臣の安保理演説というものを、これは日本語訳ですけれども、これを持っておるんですけれども、やはりこの中でにじみ出ているのは、米国が主導するテロとの闘い、これについては一緒に闘っていく意思はある、ただ戦争というのは最後の手段なんだ、まだ査察というものを継続すべきだ、そのためにフランスはいかなる協力も惜しまないと。
 そして、この中にこういう文章があります。
 「一見、戦争は最も手っ取り早い選択肢のように思われる。しかし忘れてならないのは、勝利しても、その後は平和の構築が必要だということだ。現実から目をそらしてはならない。イラクの一体性を維持しつつ、力の侵攻によって深刻な打撃を被った国・地域に持続的な安定を回復させるのは、長い道のりで、困難を極めるだろう。」
 それともう一点。「早まった武力行使は深刻な結果をもたらすリスクがある。」「かかる軍事介入は、すでに傷つき脆弱なこの地域の安定に、計り知れない深刻な結果をもたらすだろう。不正義に対する感情を増幅し、緊張を深刻化させ、さらなる紛争の引き金になりかねない。」中略で、軍事介入こそ、テロを醸成する社会、文化、民族の間の対立をさらに悪化させかねない。
 「国連という殿堂において、我々は理想と良心の守護者である。我々の担う重い責任と多大な名誉が、我々に平和的な武装解除を優先させるはずである。これが、戦争と占領と蛮行を経験したヨーロッパという「古い大陸」の「古い国」、フランスのメッセージだ。アメリカや他の国々からやってきた解放の戦士たちの恩を忘れない国のメッセージだ。フランスは常に歴史を見据え、人類のために立ち上がってきた。自らの価値観に忠実に、国際社会全体と、果敢に行動を起こしていきたいと願っている。我々は共により良い世界を作っていくことができると確信している。」
 ちょうど、この演説のある前には、パウエル当時の国務長官だったと思いますけれども、暗に、古い大陸、古い国と言うことで、反対するフランス、ドイツに対する嫌みを言った直後だったと思いますけれども、あえて古い国、古い大陸のフランスのメッセージだ、こういうことを言われております。
 ちょっとここで、今このことを提示させてもらいましたのは、さっき言いました、国際社会を何とか平和裏というか、このイラク紛争を戦争でない形で解決したい、そして、アメリカが主張するテロとの闘いについては協力する用意がある、だけれども、自分たちは今申し上げたようなことを主張し、アメリカに早まるなということを国連の場で堂々と主張した、このこと。しかも、今の混乱を見ていますと、形上は新たな政府ができましたけれども、まだまだ私は混乱のきわみにあると思っておりまして、そういう意味で、この先見の明と、それを思い切って発言をし、アメリカから多少嫌われるといいますか、いざこざがありながらも堂々と主張したという、このフランスに改めて敬意を表するところでございます。
 ちょっと、これに関連して麻生大臣にお伺いしたいんですが、もう随分古い論文でありますけれども、元国立博物館館長の梅棹忠夫先生が著した「文明の生態史観」というものをお読みでしょうか。また、ここに持っているのですが、最近ベストセラーになっております「国家の品格」、この二つの、一つは論文、一つは書物について、お読みになったかということと、それらの書物、論文に対してどのようなことを思っておられるか。もし読んでおられなければそれで結構でございますが、もし、何十年か前でも読んでおられたのであれば、その辺のコメントをお聞きしたいと思っています。

○麻生国務大臣 「文明の生態史観」は、大学を出てすぐぐらいでしたかね、一九七〇年ちょっと前ぐらいに出た本だと思いますが、生態史観という本の中にまた別の論文もいろいろあったので、読んでおります。二つに分けるところにむちゃがあるなと思ったのが一つと、何となくこの人は余り外国を知らないんじゃないかなと思ったりもいろいろしました。その当時は、私は南アメリカやらアフリカやらいろいろなところに住んでいた後だったものですから、特にそういう記憶があります。
 それから、藤原さんという方は、その方は数学者だと思いましたけれども、今まで随分売れない本をいっぱい書いていたようでしたけれども、初めて売れて、当たったというので、大変うれしいという話をこの間テレビで出てしゃべっておられたのが非常に印象的だったので、自分としてはこういう本が売れるのがちょっとよく理解ができぬ、ほかのもっといい本の方がもっと売れなくちゃおかしいのにとか、何かいろいろ自分なりに感想を述べておられたのが、この人は正直な人やなと思って聞いていた記憶があります。
 いずれにしても、両方読ませてもらいましたけれども、数学の話は極めてまともなことが書いてあるんですけれども、まともなことを書く本が売れるというのは、当たり前のことが余り当たり前じゃなくなっているからそういった本が売れるのかなといろいろなことを考えましたけれども、いずれにしても読みやすい本でしたし、品という言葉はすごく大事なところで、品性とか品格というのは人間にとって最も大事なところの一つだと思いますので、国家においても同じようにそのようなものがあるべき。昔、司馬遼太郎の国柄という言葉が出たことがありますが、それと同じように、品格という言葉を使うというのは、非常にいい単語が登場してきたなと思って、それがまた非常に売れているということはいい傾向だ、私自身はそう思っております。

○吉良委員 梅棹論文に対しては非常に手厳しい意見ですし、藤原正彦さんの「国家の品格」については非常に好意的なコメントでございました。
 私もいろいろ世界を回ってきたつもりでありますが、梅棹論文、たしか五六年ぐらいの論文だったと思いますし、私はそれ以降読んだんですけれども、ただ、一つあの中で述べられていたことで私が思いますのは、第一地域、第二地域、おっしゃるように二つは乱暴だなと。おっしゃるとおりなんですけれども、ただ、第一地域というのは、封建制があって、結果的には自我が目覚め、地域地域の独立性があって、今、高度な民主主義と高度な文明を謳歌している地域、日本と西ヨーロッパ。特に、中国文明、ロシア文明、インド文明、それからイスラム文明、こう言われるところはもう過去の歴史からしても破壊と建設ということがずっと繰り返されて、結果的にですけれども、ある意味では、独裁または専制政治と、支配者とその他大勢という、これがずっと繰り返されている地域だ、こういうことであります。
 その分け方というのは、今言った四つの文明圏に対しては大変失礼な言い方にもなりますので、私、それ自身を肯定しようとは思わないんですけれども、ただ、言えることは、それらの地域というのは、やはり本当に独自の文化、歴史、文明があって、アメリカ流の民主主義、また自由と民主主義というのは全くなじまない地域だというふうに私は思っております。
 そういう意味で、アメリカの、私、時間がなくなるので最初に結論を言いますと、2プラス2、さっき言った、日米同盟がどんどん深化している、これ自体否定するものではないんですけれども、どんどん米国と一体化して、軍事面、政治面、経済面で何か日本が常にアメリカと一体になって、世界に協力をと言ってもアメリカと一緒、アメリカと一緒。だけれども、さっき言いましたアメリカのお人よしは、もう小さな親切というか大きな親切のつもりで大きな迷惑をこの地域にもたらしている。もうイラクなんかその典型だと私は思っております。
 八〇年代の後半に、ベクテルという、アメリカの政商とも言われる、シュルツ国務長官が会長をやっていた巨大エンジニアリング会社と一緒にトルコの当時オザール首相が、民間の資本とかノウハウを利用した民間活力導入型のインフラ整備プロジェクトというのを発案して、実は、私ども日本、米国、ドイツ、それとトルコ、この四つでコンソーシアムを組んでそのプロジェクトを推進したことがあります。そのときの物すごくおもしろい経験というのは、ベクテルのトップの方というのは、それはもうオザール首相にすぐ話せるし、米国の国務長官などとすぐに話ができて、すぐトップ同士でぽっと話が行くわけです。ところが、トルコの下の官僚たちは全く動かないんですね。当時、電力のプロジェクトだった人も全く動かないで進展しない。
 そういう中で、ドイツの、個別言ってもいいと思うのですが、ジーメンスという巨大な電機会社の人たちが、悪いけれども、アメリカというのはもう全くわかっていないと。彼らの言い方は多少失礼だけれども、自分たちは歴史の中で、アジアそれから中東も含めて、植民地経営も含めてよく彼らのことをわかっている、だから、本当に進めようと思うんだったらおれらに任せろ、アメリカ流でやったら全くうまくいかないんだということで、ドイツが、表じゃない、裏方ですけれども、どんどん前に出たら一挙に進み始めたというのがあって、そういう意味で、ヨーロッパ諸国というのは、植民地経営の是非はともかく、やはり地域のことをよくわかっている、知っている。そして、そこに生きる人間という価値観をきちんと理解した上で、現実を踏まえて物事を進めていこうとしている。
 これに対して、アメリカというのは、理想はぼんと出ていくし、自分の国の仕組みがすべて通じるような感覚で対処していきますので、私は、このアメリカ流のやり方が、さっき言った、軍事的にはイラクでも問題を起こしている。実は、中南米であれだけ今、前も言いました、反米左派政権ができている一つのきっかけは、経済的にまだ発展途上の、十あれば三とか四段階にある国にいきなり九、十のレベルの手法を持ち込んで、もうぐちゃぐちゃにしてしまって、結果的にこんなはずじゃなかったということで、また社会主義といいますか、揺り戻しが起こっているんですね。
 私は、ある意味で、ヨーロッパの経験と勇気に学び、だけれども、「国家の品格」というのを出したのは、我が国というのは、かつてそれほど世界に対して打って出た経験があるわけではございませんけれども、自分の伝統、文化の中でこの国をきちっとマネージしてきた経験がある、そしてそれを世界に訴えていっても十分に今の時代は通用する、そういう我々、文明、文化を持っていると思うんです。
 そういう意味で、繰り返しますけれども、アメリカに自分の生存を依存してしまっているような国であっては、みずからがこれこそ世界のためによかれということをなかなか主張できない。本当に日本として世界に、今こそ日本の文明、伝統でもって世界を平和に、環境に優しい地球をつくっていく。こういうようなことを発信する意味でも、ぜひ、短期的にはともかく、長期的には、対等な関係に近い、上下ではなくて、少なくとも兄弟分ぐらいにはなれる関係にして、日本のそういうよさ、「国家の品格」で書かれたようなことを世界に訴えていけるような、そういう国づくりを、首相になられればもちろん先頭に立ってやっていただきたいと思っておりますし、そのことに対する麻生大臣の見解を承りまして、終わりたいと思います。

○麻生国務大臣 最初に、梅棹先生の話が出ていましたので。
 第一地域、第二地域の中で、簡単に言えば、ヨーロッパと日本が第一地域で、真ん中が第二地域で、その他地域は無視というのが、ちょっとむちゃだなという本ではありましたけれども。ただ、あの中で、今言われましたように、第二地域の中において、第一地域、我々の外の辺境の地域にあっては、この真ん中でごちゃごちゃいろいろとったりとられたり、トルコなんて、もとのトルコと今のトルコとは全然別の場所にあるぐらいですから。そういった意味では、日本のように最初から今日まで二〇〇〇年ぐらいの間、同じ地域に同じ文化、文明で一国で成り立っているという国の方が珍しいということになっているのは事実。しかし、その分だけ他国にもまれるという経験には乏しかった。これは結果論としてはそのとおりだと思っております。
 傍ら、第二というその真ん中の地域においては、丸々ひっくり返るような騒ぎをしていますので、そういう歴史にもまれて経験が随分違ってきた、結果としてそれが防衛意識も変えたでしょうし、やはり基本的には大陸国家と海洋国家の違いはあったろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういったのが一つの考え方としてあるのは事実ですし、私どもは大いに参考にせないかぬところの一つだと思っております。
 それから、日米につきましては、これに丸々おんぶにだっこはいかがなものかという御意見なんだと思いますが、私もその点に関しては全く異論を唱えるものではありません。やはり自前でできるところは自前というのは当然のことだと思います。
 ただ、今の状況というのはもう御存じのとおりの状況でもありますので、今の東アジア、北東アジアの状況がどう変わっていくかによってもっと変わったものになっていくかもしらぬという感じもしますし、いろいろな意味で今までとは少し状況が変わってくる。我々の方も努力をしていかねばならぬところだと思います。
 今の不透明とか不確実な状況というのが続いているという前提でいきますと、きちんとした防衛力というのを自主だけでやれない部分がありますので、そうなってくると、その部分はきちんと同盟関係を結んでおくというのが、安全保障という面におきましてはそういう考え方になると存じます。
 ただ、今言われましたように、随分時代が変わっておりまして、一九七九年、ソ連軍アフガニスタン侵攻、その十年後にはソ連がなくなるなんということを予想した人は日本じゅう、世界じゅう一人もいやしませんから。そういった意味では、十年後のことはわからぬと。これは二十世紀が人類に与えてくれた最大の教訓の一つだと思いますね。僕は、そういった意味では、少なくとも一九四〇年、私が生まれた年ですけれども、十年後に日米安全保障条約なんて考えもしなかったと思いますね。僕はそういうものだと思いますよ。戦争が始まったときと終わって五年して変わったんですから。
 そういった意味では、今の状況というものが、あと十年、二十年したらどう変わっていくかというのはなかなか予想しがたいところだとは思いますけれども、いずれにしても、いつの時代でも変わらないのは、自分のことは自分、それは基本だと思います。

○吉良委員 自分の国は自分で守るということと、真の独立のための自主防衛路線を引き続いて検討していただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。

○原田委員長 次に、笠井亮君。


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